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静岡地方裁判所 昭和63年(ワ)61号 判決

原告(反訴被告)

鈴木誠三郎

被告(反訴原告)

中村栄

ほか一名

主文

一  本訴原告・反訴被告は、本訴被告・反訴原告中村栄に対し金一〇五万六五六〇円、本訴被告・反訴原告辻武彦に対し金四八万〇二一〇円及びこれらに対する昭和六三年一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  本訴原告・反訴被告の本訴請求及び本訴被告・反訴原告のその余の反訴請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は本訴原告・反訴被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  本訴請求の趣旨

1  昭和六三年一月二〇日午後八時ころ清水市長崎二七〇番地所在パチンコタイガー内の駐車場において発生した交通事故に基づく本訴原告・反訴被告(以下「原告」という。)の本訴被告・反訴原告(以下「被告」という。)らに対する損害賠償債務は存在しないことを確認する。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  本訴請求の趣旨に対する答弁

1  原告の本訴請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

三  反訴請求の趣旨

1  原告は、被告中村に対し金一一一万一九七〇円、被告辻に対し金五三万〇二一〇円及びこれらに対する昭和六三年一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

3  第1項につき仮執行の宣言

四  反訴請求の趣旨に対する答弁

1  被告らの反訴請求を棄却する。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行免脱の宣言

第二当事者の主張

一  本訴請求原因

1  被告らは原告の被告らに対する本訴請求の趣旨記載の損害賠償債務が存在すると主張している。

2  しかし、本件事故は軽い接触事故であり、被告らの傷害との因果関係は存在しない。

二  本訴請求原因に対する認否

本訴請求原因1は認めるが、同2は争う。

三  反訴請求原因

1  昭和六三年一月二〇日午後八時ころ、清水市長崎二七〇番地所在のパチンコタイガー内の駐車場に小型貨物自動車を駐車していた原告は、帰宅のため右加害車両に乗車し、ギアがバックに入つていたことを確認せず発車の操作をしアクセルを踏んだため右車両は後退を始め、折から加害車両のすぐ後方に駐車した軽乗用車に自車後部を衝突させ、被害車両運転者席に乗車していた被告中村に対し頸部捻挫の傷害を負わせ、同車助手席に乗車していた被告辻に対し頸部捻挫、腰椎捻挫の傷害を負わせた。

2  被告中村の損害は次のとおりである。

(一) 治療費 七万〇〇九〇円

(二) 交通費 一万八〇三〇円

(三) 休業損害 五七万三八五〇円

被告中村は一か月二五日勤務し、一日平均一万一四七七円の給与を受けていたところ、二か月間休業した。

(四) 慰藉料 三五万円

(五) 弁護士費用 一〇万円

3  被告辻の損害は次のとおりである。

(一) 治療費 二万八九一〇円

(二) 交通費 一三〇〇円

(三) 慰藉料 四五万円

(四) 弁護士費用 五万円

四  反訴請求原因に対する認否

1  反訴請求原因1につき、接触事故の発生は認めるが、態様及び傷害の発生は争う。

2  同2は不知。

第三証拠

書証目録及び証人等目録記載のとおり。

理由

一  昭和六三年一月二〇日午後八時ころ、清水市長崎二七〇番地所在のパチンコタイガー内の駐車場に小型貨物自動車を駐車していた原告が、帰宅のため右加害車両に乗車し、右車両が被告ら乗車の軽乗用車に接触したことは、当事者間に争いがない。成立に争いのない甲第四号証、被告中村の供述により成立を認める乙第一号証の一、被告辻の供述により成立を認める乙第五号証、右各供述、原告の供述(一部)によれば、原告は、ギアがバックに入つていたことを確認せず発車の操作をしアクセルを踏んだため右車両は後退を始め、折からすぐ後方に駐車した軽乗用車に自車後部を衝突させ、被害車両運転者席に乗車していた被告中村に対し頸部捻挫の傷害を負わせ、同車助手席に乗車していた被告辻に対し頸部捻挫、腰椎捻挫の傷害を負わせたものであることが認められる。甲第三号証は採用しない。因果関係を否定するに足りる証拠はない。

原告は過失責任を免れない。

二  被告中村の損害は次のとおりである。

1  被告中村の供述により成立を認める乙第二号証の一、二によれば、被告中村は治療費七万〇〇九〇円を支払つたことが認められる。

2  被告中村の供述により成立を認める乙第三号証、同供述によれば、被告中村は交通費一万二六二〇円を支払つたことが認められる。

3  被告中村の供述により成立を認める乙第四号証の一ないし三によれば、被告中村は昭和六二年一二月二三日から昭和六三年一月一九日まで二二日間東進設備に勤務し、二五万二五〇〇円の給与を受けていたことが認められるところ、前記乙第一号証の一、被告中村の供述により成立を認める乙第一号証の二によれば、被告中村は昭和六三年一月二二日から同月二九日まで土川整形外科に五日実通院し、同年二月二日から三月二三日まで古沢外科医院に一八日実通院したことが認められ、二か月間休業のやむなきに至つたとみられるから、休業損害は被告中村主張の五七万三八五〇円を下らない。

4  慰藉料は三〇万円が相当である。

5  弁護士費用は一〇万円が相当である。

三  被告辻の損害額は次のとおりである。

1  被告辻の供述により成立を認める乙第六号証によれば、被告辻は治療費二万八九一〇円を支払つたことが認められる。

2  被告辻の供述により、成立を認める乙第七号証によれば、被告辻は交通費一三〇〇円を支払つたことが認められる。

3  前記乙第五号証、被告辻の供述によれば、被告辻は昭和六三年一月二一日から同年三月一六日まで立岩病院に三二日実通院し、ラーメン店の仕事を相当期間休まざるをえなかつたことが認められ、慰籍料は四〇万円が相当である。

4  弁護士費用は五万円が相当である。

四  被告らの反訴請求は、被告中村に対し金一〇五万六五六〇円、被告辻に対し金四八万〇二一〇円及びこれらに対する昭和六三年一月二一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がなく、原告らの本訴請求は理由がないから、民訴法八九条、九二条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 大前和俊)

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